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 ピアノ調律師サリーパパの濃すぎるピアノ・ストーリー  マガジンID:08567
ピアノ調律師サリーパパです。一般の個人宅に伺うこともあれば、コンサートの調律もあり、学校の調律もあります。そんな日々出会うピアノと持ち主様の深くて濃~いお話です。

最終発行日:2017年3月31日 総発行回数:10回
登録日:2016年11月8日 読者数:19
発行周期:不定期 登録料:無料
バックナンバー:全て公開 発行者のホームページ

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 落下したスタインウェイ
  発行日時:2017年2月2日 マガジンNo.08567
「ピアノが運送業者によって壊されました(>_<)」


泣きそうな声と怒りが混じった声で、お客さんが電話してきました。以前からのお客さんですが、
引越しのため、運送業者に運んでもらっているところでした。

ピアノは古いスタインウェイのD型。相当重いです。おそらく80年以上前のもの。
これが部屋から運び出そうとして、クレーンで引き上げていたところ、在ろう事か、クレーンの
ワイヤーが断線し、2メートルくらいの高さから、庭先に落下したのです。
(幸いに、庭は芝生で柔らかかったのです。)しかし、ところどころ、弦は切れ、鍵盤はパラパラ
と象牙が剥がれ、響板もダメージを受けたことと思います。


大事なスタインウェイ。お客さんは女性ですが、自分で働いて稼ぎ、ウィーンに留学までして
ピアニストなった。そして若い時から苦労を共にしてきた古いスタインウェイ。「私のおじいちゃ
ん」と呼んでいました。

僕は運送業者に連絡して、全てを修理するように強く言いました。
当初、響板の割れは落とした時のものでなく、前からものだと業者は主張したのですが、それも突
っぱねて、全ての弦の張り替え、象牙の鍵盤の補修、割れた響板の補修、全てのダンパーの交換、
ハンマーファイリング、調律、調整、整音…外装の傷の直し…全て保険でやらせました。


総額で100万以上はかかったと思いますが、修理はウチの事務所でやらせてもらいました。



二ヶ月かかりましたが、響板はすっかり直り、弦とダンパーは全て新品、ハンマーは綺麗に整い、
鍵盤は象牙でピカピカ…そして外装は後光が射しているかのような輝きになって、帰ってきたので
す。

落下した直後は、泣いていたお客さんでしたが、戻ってきて、その「おじいちゃん」を愛でるよう
に弾いた時、お客さんの目に涙が溢れていたのを僕は、しっかり見ました。

「怪我の功名」とでも言うのでしょうか?


どんな辛さも、きっと喜びとなって返ってくるんだと思えた出来事でした。

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