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| 落下したスタインウェイ | |
| 発行日時:2017年2月2日 | マガジンNo.08567 |
| 「ピアノが運送業者によって壊されました(>_<)」 泣きそうな声と怒りが混じった声で、お客さんが電話してきました。以前からのお客さんですが、 引越しのため、運送業者に運んでもらっているところでした。 ピアノは古いスタインウェイのD型。相当重いです。おそらく80年以上前のもの。 これが部屋から運び出そうとして、クレーンで引き上げていたところ、在ろう事か、クレーンの ワイヤーが断線し、2メートルくらいの高さから、庭先に落下したのです。 (幸いに、庭は芝生で柔らかかったのです。)しかし、ところどころ、弦は切れ、鍵盤はパラパラ と象牙が剥がれ、響板もダメージを受けたことと思います。 大事なスタインウェイ。お客さんは女性ですが、自分で働いて稼ぎ、ウィーンに留学までして ピアニストなった。そして若い時から苦労を共にしてきた古いスタインウェイ。「私のおじいちゃ ん」と呼んでいました。 僕は運送業者に連絡して、全てを修理するように強く言いました。 当初、響板の割れは落とした時のものでなく、前からものだと業者は主張したのですが、それも突 っぱねて、全ての弦の張り替え、象牙の鍵盤の補修、割れた響板の補修、全てのダンパーの交換、 ハンマーファイリング、調律、調整、整音…外装の傷の直し…全て保険でやらせました。 総額で100万以上はかかったと思いますが、修理はウチの事務所でやらせてもらいました。 二ヶ月かかりましたが、響板はすっかり直り、弦とダンパーは全て新品、ハンマーは綺麗に整い、 鍵盤は象牙でピカピカ…そして外装は後光が射しているかのような輝きになって、帰ってきたので す。 落下した直後は、泣いていたお客さんでしたが、戻ってきて、その「おじいちゃん」を愛でるよう に弾いた時、お客さんの目に涙が溢れていたのを僕は、しっかり見ました。 「怪我の功名」とでも言うのでしょうか? どんな辛さも、きっと喜びとなって返ってくるんだと思えた出来事でした。 |
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