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 ピアノ調律師サリーパパの濃すぎるピアノ・ストーリー  マガジンID:08567
ピアノ調律師サリーパパです。一般の個人宅に伺うこともあれば、コンサートの調律もあり、学校の調律もあります。そんな日々出会うピアノと持ち主様の深くて濃~いお話です。

最終発行日:2017年3月31日 総発行回数:10回
登録日:2016年11月8日 読者数:19
発行周期:不定期 登録料:無料
バックナンバー:全て公開 発行者のホームページ

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 時が止まった家族
  発行日時:2017年1月26日 マガジンNo.08567
「子どもがピアノに傷をつけてしまって…直してもらえますか?」という電話から始まりました。
お伺いしてみると、グランドピアノ2台が並んでいました。老齢の奥さんが、「子どもがミニカー
をピアノの上で走らせて、こんなに傷が付いてしまったんですよ。」と言います。たしかにうっす
らと細かい線が数本…

子ども❓もしかしてこの人はピアノ先生で、生徒の事を言っているのだろうか?と思いながら
聞いていましたが、どうも自分の子どものことらしい。しかも小学生の子ども。

部屋は、ゴミだらけというほどではないですが、ダンボールや荷物がいっぱいに置かれれていて、
歩くのも大変なくらい。

突然、「コラ‼️そんなところに隠れてるんじゃない‼️」と天井にむかってホウキの柄をガンガン
ついた。

僕は唖然としながら、一緒に暮らしてるご主人さんに話しかけました。

「どういうことでしょうか?」

ご主人さんは、「家内の好きなようにやってあげてください」と言いました。どうも30年も前の
ことを、最近の出来事のように思っているらしく、誰かが部屋にいるという幻覚にさいなまれてい
るようです。

ご主人さんの意向もあり、ピアノの傷を直す作業を始めました。

ピアノの上に「我が家の決まり」というノートがあります。何十年も前の大学ノートでした。
悪いと思いつつ、チラッと見させてもらいました。別に大したことは書いてなく、「家族の
誕生日は皆んなで夕食を食べること」。とか、他に1つか、2つくらい

この家族に何があったのかは、わかりませんが、老夫婦と2台のグランドピアノ。古い傷跡を今、
直そうとしている、恐らく統合失調症のおばあちゃん。足の踏み場もないほどの荷物、古い大学
ノートと「家族の決まり」

1日がかりで、傷を直し、調律して、ピアノを弾いてみました。

おばあちゃんは、傷を確認しながら、笑いもせずに、「大してキレイにならないわね。」
と言いながら、また「コラ‼️早く出ていけ‼️」と、幻覚の誰かに向かって叫んでました。

会計の時、ご主人さんが、少し困ったようにしてお金を支払ってくれました。

立派な家に住んでいても、内情はみんなそれぞれ…時間が30年間、止まったままの家も。
そんな家族の歴史を知ってるのは、このピアノだけなんだろうなと、思いました。

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