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| 時が止まった家族 | |
| 発行日時:2017年1月26日 | マガジンNo.08567 |
| 「子どもがピアノに傷をつけてしまって…直してもらえますか?」という電話から始まりました。 お伺いしてみると、グランドピアノ2台が並んでいました。老齢の奥さんが、「子どもがミニカー をピアノの上で走らせて、こんなに傷が付いてしまったんですよ。」と言います。たしかにうっす らと細かい線が数本… 子ども❓もしかしてこの人はピアノ先生で、生徒の事を言っているのだろうか?と思いながら 聞いていましたが、どうも自分の子どものことらしい。しかも小学生の子ども。 部屋は、ゴミだらけというほどではないですが、ダンボールや荷物がいっぱいに置かれれていて、 歩くのも大変なくらい。 突然、「コラ‼️そんなところに隠れてるんじゃない‼️」と天井にむかってホウキの柄をガンガン ついた。 僕は唖然としながら、一緒に暮らしてるご主人さんに話しかけました。 「どういうことでしょうか?」 ご主人さんは、「家内の好きなようにやってあげてください」と言いました。どうも30年も前の ことを、最近の出来事のように思っているらしく、誰かが部屋にいるという幻覚にさいなまれてい るようです。 ご主人さんの意向もあり、ピアノの傷を直す作業を始めました。 ピアノの上に「我が家の決まり」というノートがあります。何十年も前の大学ノートでした。 悪いと思いつつ、チラッと見させてもらいました。別に大したことは書いてなく、「家族の 誕生日は皆んなで夕食を食べること」。とか、他に1つか、2つくらい この家族に何があったのかは、わかりませんが、老夫婦と2台のグランドピアノ。古い傷跡を今、 直そうとしている、恐らく統合失調症のおばあちゃん。足の踏み場もないほどの荷物、古い大学 ノートと「家族の決まり」 1日がかりで、傷を直し、調律して、ピアノを弾いてみました。 おばあちゃんは、傷を確認しながら、笑いもせずに、「大してキレイにならないわね。」 と言いながら、また「コラ‼️早く出ていけ‼️」と、幻覚の誰かに向かって叫んでました。 会計の時、ご主人さんが、少し困ったようにしてお金を支払ってくれました。 立派な家に住んでいても、内情はみんなそれぞれ…時間が30年間、止まったままの家も。 そんな家族の歴史を知ってるのは、このピアノだけなんだろうなと、思いました。 |
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