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| 弾かないピアノの調律を依頼して下さる理由 | |
| 発行日時:2017年1月17日 | マガジンNo.08567 |
| 定期的に調律にお伺いしてますと、 最初はレッスンで弾いていたけど、レッスンをやめてしまい、 弾かなくなってしまったけど、ピアノをいい状態にしておくために 調律を今まで通り依頼してくださるお客さんがいます。 しかし、そのお客さんは最初の依頼の時から、ピアノは全く弾いていない という年配のご主人さんでした。 お伺いしてみますと、記録カードによるとこの2、3年は調律をしていないピアノでした。 お聞きしてみたところ、奥様の愛用していたピアノだったようですが、 2年前に亡くなってしまったとのことでした。 そのピアノを奥様の代わりに、大事にメンテナンスしておきたいと思って、 調律を依頼してくださったそうです。 40年前のヤマハのアップライトピアノです。奥様が若い頃、働き始めて、子どものころに 習わせてもらえなかったピアノを自分のお給料で月賦で買ったものだそうです。 ハンマーは磨耗し、弦も錆びていましたが、今更、何万円もかけて 直そうとは思えないが、調律だけはしておきたい… そんな思いのご主人さんでした。 ピアノの上には、セルロイドの人形が曇ったガラスケースに入ってたり、 使い古したツエルニーの楽譜があります。椅子は昔の丸い回転椅子。 亡くなられた奥様の面影をうかがわせ、その空間だけ時が止まっているようでした。 そんな奥様を想像しながら、心をこめて調律させていただきました。 弾かれることのないピアノ… でも、毎年、調律を依頼してくださるお客さん… 弾くとか、弾かないとかの問題を超えた、人間模様を垣間見ることのできた瞬間でした。 |
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